色

旅にひたる3

JBのバス・ターミナルは香る – マレーシア ジョホールバル ラッキン (Larkin)

ジョホールバルの郊外にある長距離バスのラッキン・ターミナルから、マレーシアの各地へバスが出ています。たくさんの人たちが行き交いとても活気があって、とてもいろいろな香りがあたりに散らばっていました。

すき間旅行者のページ

》》

旅にひたる

》》

旅にひたる3

 「Melaka、Melaka、Melaka・・・」「KL、KL、KL・・・」。バスの行き先を大声で繰り返す人たちが行く先に立っていた。先頭にいるおじさんは口髭をはやし派手なシャツを着て、両手を横に広げながら声を出している。シンガポールからバスで国境を越えてきた人たちが目当ての呼び込みだ。横のほうに立っている呼び込みの一人と目が合う。行先を告げたら、あっちに行けと追いやられた。

Larkin Bus Terminal

 マレーシアの南にあるジョホール州の州都ジョホール・バルには、マレーシア各地への長距離バスが行き来するラッキン・バス・ターミナルがある。シンガポールの中心部から、国境を越えて来ても一時間はかからない。マラッカ(Melaka)、クアラ・ランプール(KL)や、タイ国境の近くのカンガー(Kangar)という町までも行くバスが出ている。ガーゴーというエンジン音と排気ガスが混ざり合う中に、青、黄色、オレンジや虹色に塗られたバスが停まっている。朝7時だというのに、ターミナルにはたくさんの人が集まっていた。大きな荷物を持っている人や、Tシャツにサンダルの人もいる。チケット売り場は、ターミナル・ビルの1階にびっしりと並んでいて、そのほとんどが2-3間ほどの間口しかない。それぞれ別のバス会社のようだ。マレーシアのお金を調達するために、ターミナルの裏側にある銀行ATMの列に並ぶ。ふと気がつくと、むっとする湿った空気の中に、はっきりとしたアンモニア臭が波打っていた。

バスのキップ売り場

 窓口をふらふらしながら、ようやく目的のチケットを手に入れた。バスに乗る前に用を足そうと、案内表示にそって歩いて行く。すると、トイレの入り口の前の机があって、おばさんが座っている。男女の入り口の真ん中にいて、銭湯の番台のようだ。おばさん料金回収人だった。使用料は1回10円もしない。しかし、有料なので、よく手入れの行き届いたトイレなのだろう。足元は、ヌルヌルしていないはずだ。洗面台は、真っ白で少しの汚れもない。クリーンな空気だろうから、深呼吸もできようか。ちゃんとエアコンもきいていて、涼しいのだろう。しかし、すぐに状況が理解できた。東京のJRの駅のトイレのほうが、はるかにきれいだ。エアコンはついていない。有料なのだろう?徴収したお金は、いったい何に使っているのだ。使っている人たちは、こんな程度で不満がないのか。掃除係は、いったい何をやっているのか。バケツで水をまいただけで、終わったことにしているのではあるまいか。しかし、意外なことに、不快なにおいはない。むしろ、食堂のようなにおいがする。理由がわかった。となりはフード・コートのような食堂になっていて、天窓からそのにおいがこちら側に入ってくるのだった。食べ物のにおいが充満しているトイレは、どこの国でも出会ったことがなかった。普通に深呼吸ができる。しかし、冷静に考えてみると、食堂の空気とここの空気がそのまま入れ替わっているのではないか、きっとそうなんだという結論になった。ただし、確かめてはいない・・・

マレーシア各地へ行くバス

 水を買っておこうと思い、ターミナルの中にもどった。小売りの店がたくさんある。食べ物屋もあった。屋根が続く先の方は、野菜を売る市場になっている。市場とバス・ターミナルが合体しているのだ。傷んだ野菜のにおいがするので見まわすと、通路に竹であんだカゴがあって、しなびた野菜が山盛りになっていた。バスに乗る時間が近づいてきたからプラットフォームに出ると、排気ガスを包みこんだ空気に囲まれる。通路にある灰皿では投げ入れられたタバコが紫色の煙を出していて、それが鼻に流れ込む。すぐ前を横切って行ったおじさんのランニング・シャツには、すでに汗のにおいがびっしりと張りついている。そして、横にある青いゴミ箱の中の、少し時間の経ったと思われる残飯が、このあたりにそれなりの臭いをそろっと押し出していた。

》》 旅にひたる


Copyright © 2018 すき間旅行者 All Rights Reserved