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旅にひたる4

シンガポールの中の香港の存在 – シンガポール HongKong Street

シンガポールには、Mayo Street、Indus Road や Bath Road といった、楽しそうな名前の道がたくさんあります。Olive Road もあって、その周囲にはオリーブの木々が茂っているのでしょう。その中に HongKong Street という名前の道がありました。

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本物の香港のネーザン道

 シンガポールの観光スポットのクラークキーの近くに、HongKong Street がある。「香港通り」である。香港に関係のある通りなのだろう。「香港」と自ら名乗るからには、本場のネイザン道のように、両側から道の真ん中へ向かってせり出した、原色ギトギトの看板がたくさんがあるのだろうと思った。夜でも昼間のように明るい。沿道ではたくさんの人たちが行き来して、なかなか前に進むことができない状況なのだろうと期待した。カメラ屋、漢方薬局、Watsons、セブンイレブンなどに、お客がたくさんいる。そういえば、シンガポールには香港炒麵という焼きビーフンがある。香港には香港ビーフンはない。もしかすると、この通りが香港炒麵発祥の地かもしれない。そうであれば元祖香港炒麵の店があって、その前には行列ができているはずだ。ゴーゴーゥというガス・バーナーのコンロの上で、フライパンをガシガシ振る音が聞こえているはずだ。元祖香港炒麵の道の反対側に、本家があってもいい。雑踏の中では威勢のいい呼び込みが響く...

シンガポールの HongKong Street

 通りの入り口に立った。通りを奥まで見通すことができる。300メートルほどの一方通行の通りで、両側に車が停まっている。突き当りのビルの後ろには、電話会社の高層ビルが覆いかぶさるように見える。日曜日の夕暮れ時だが、人通りはほとんどない。漢方薬の香りが流れてくる。通りに面した軒下を作る5階建ぐらいの建物は、造られてから30年か40年は経っているように見える。しかし歴史的な重厚感を出すには至っていない。古ぼけただけで、いくらか中途半端な風体だ。視界が全体的に暗い。う~ん、なぜ HongKong Street と名乗っているのか?

精美食品工業有限公司

 軒下を歩きながら、「精味腊腸」「同成貿易」「馬光中医院」「星洲鑑泉太極健身社」「新年快楽」などの漢字を見た。香港通りだからといって、他の場所よりも多くの漢字を見かけるわけでもない。たいていの店はシャッターを閉めているが、数軒のバーは開いていた。いずれも人はあまり入っていない。Back Packer Hostel という文字があった。見回してみて、安宿が数軒あることに気が付く。香辛料の匂いがする。しかし、香港炒麵どころか、レストランが見当たらない。どういう状況なのか。頭上にあるばずの、ネオンサインがない。雑踏どころか人影がない。車も通っていない。本場のネイザン道とは真逆と言っていい。何か香港に関係するものはないかと立ち止まってあたりをながめるが、残念ながらない。

この軒下の道の向こうにサングラスの男が

 急ぎ足ならば、5分ぐらいで終わってしまう通りだった。突き当りで取って返してくる途中、ぼんやりとした蛍光灯に照らされる軒下を行く先に、ふいに小柄な男が現れた。携帯電話で話しをしている。白いスーツにくわえたばこ姿だ。あたりは暗くなっているというのに、黒い小さな丸いサングラスをかけている。サングラスの横から、ちらりとするどい目が見えた。あたりに人はいない。何となく目を伏せがちにして、軒下の段差に足をとられないようにしながら、素早く表通りへ進み出る体制に入った。しかし、いったいどんな理由があって、何の事情があって香港通りなのだろう…

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