旅にひたる6
世界三大がっかり... ではなかった … シンガポールのマーライオン
シンガポールのマーライオンは、世界三大がっかりなどと世間から言われた不名誉な時期がありました。しかし、本人はそんなつもりはなく、ただただ口から水を噴き続けていました。その地道な努力があってなのか、今はがっかりではなくなっています。
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旅にひたる6
世界三大がっかりスポットに関して、世間にはいろいろな意見があるようですが、だいたいはブリュッセルの小便小僧、コペンハーゲンの人魚姫、シンガポールのマーライオンのようです。しかし、最近のマーライオンは、周辺からいろいろと応援を受けていることもあって、もはや「がっかり」ではないような気がしています。
半分はライオンで半分は魚の体をしているシンガポールのマーライオンには、1993 年ごろに訪れたことがあります。ガイドブックにも、観光客を歓迎する観光スポットとして紹介されています。しかし、説明はとても簡単で、「夜はライトアップしていてきれいだから、訪れるように」といったことが書いてありました。当時は、こんな感じでした...
ようやく着いたマーライオン公園では、目線の先に背中をこちらに向けているマーライオンがいました。それ以外に目を引くものは何もなく、僕たちの他には誰もいません。さすが三大モノ。近寄って見たマーラインは、少し黒ずんでいたような記憶があります。それはコケだったようにも思えます。誰もどこからも見ていないのに、ただ口から水を出していて、海面にしゅわしゅわと落としていました。遠くの対岸には、ジャングルのような木々が見えています。時間がゆるゆると流れていたように覚えています。
最初にマーライオンに歓迎されて 20 と数年経った最近、再びマーライオンを訪れました。公園の入り口があるエスプラネード橋の近くには、観光バスが何台も停まっていました。橋の横の階段を、たくさんの人たちが公園へと降りていくようです。海側には、大きな船を屋上に載せた格好のマリナベイサンズが見えます。五つ星のホテルです。明らかに観光地のにおいがしました。
みんなの進むままに階段を降りていくと、エスプラネード橋の下には売店が並んでいて、土産物や軽食などを売っていました。ソフトクリームを売っている店には、列ができています。いろいろな国から、たくさんの人たちが来ているようです。奇声を上げている一団もいます。海の方へ進むと、こちらを向いて小さなマーライオンが水を吹いていました。マーライオン小は、人よりも少し背が高い程度でしょうか。その後ろには、背中を向けたマーライオン大がいます。マリーナ湾をはさんだ対岸には、マリナベイサンズがどーんと構えています。さえぎるものがありません。右後ろには、シェルトンウェイにある銀行のロゴを付けた高層ビルたちが迫っています。太陽の光を受けてゆらゆらしながら。公園では、みんな思い思いに写真を撮っていますね。マーライオン大の口から出る水が、ちょうど自分の口の中に入るようなかっこうで、写真を撮っている子供がいます。マーライオンも高層ビルも後ろに入らない構図で、全員がピースをして写真を撮っている団体がいます。マーライオン小のうろこを接写している人もいます。
おしゃれなカフェもあって、にぎわっているあたりを見回しながら歩いていたら、突然足元の段差に右足が宙を切り、前につんのめりました。同時に、両手はクロールをするように、ぐるぐる回っていた気がします。テラスのようなところに、ところどころ段差があります。まわりの景色を見ながら歩くこんな場所に段差を作って、危ないなぁもうどういうことですかと思っていると、そこには段差注意の看板が、きちんとありました。すいません、段差に目もくれなかった私の完全なる不注意です。はい。
ふらふらしていると、もう世界三大がっかりスポットとは言わせないという意気込みを感じることに気が付きました。マーライオン大が聞かせる水の音、迫りくるゆらゆら高層ビル群、丸見えのシンガポールの象徴マリナベイサンズ、ガンガン照り付ける太陽、テラスに白い椅子を出すカフェ、するすると出入りする観光クルーズ船、マーライオン小の足元にある「立ち入り禁止」の看板、遠くに見える観覧車など。マーライオン自身にも、歓迎しますよという気迫さえ感じます。観光スポットだと認知される条件として必要な心技体が整っています。観光に来た人たちを出迎えるマーライオン小の心、二体のマーライオンを盛り上げる取り巻きたちの技、そしてその中心で背筋を伸ばし堂々と水を噴くマーライオン大の体。どうです、りっぱな観光スポットでしょう。来るに値します。決してがっかりさせませんと言いたい。
しかし、このような発言にはお叱りを受けるかもしれませんが、「一度は来たほうがいいところですね」という基本的な感想の方針は、20 数年前とあまり変わっていないように思いました。とは言うものの、私は10回は行きましたけども。みなさん、どうぞ訪れてみてください。
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